せめて千円札があったら

20時の閉店まで1時間
思考回路は急ぎめ

銀座で車を駐車する場所を探していたら
見知らぬおじさんが運転席の窓の外から話しかけてきた
声が聞こえづらかったから窓を半分開けてみた

おじさんの第一印象は「その日暮らし」
浮浪じゃないけど住所不定無職風
アルコール臭ぷんぷん
怖い人じゃなさそうだけどなんだか厭な感じ

で、そのおじさん
今そこに人(自分)がいたの気づいてた?
ぶつかりそうだったよと

そんなギリギリじゃなかったけど、とりあえずサクッとかわしたくて、
すみませんでしたと笑顔で答え
その場を後にして駐車場のある場所へ移動しようとしたら

おじさん私の車の窓に手をかけて
ぶつからなかったけど
お尻のポケットに入れてた携帯が車にぶつかって壊れてね
「いやいいんだけど」と

わーなにやだ私ぶつかってないしと思いながら
でも窓に手がかかってるから無視もできなくて
2秒考えた

関わらない方が良さそうな
いいんだけどって言ってるし
やっぱり車を進めこの場から離れよう

優しくアクセル踏んでみたら

おじさん窓に手をかけたまま
携帯がぶつかって壊れたんだよ
ほら液垂れしてるでしょと携帯を差し出してきた
「いや、いいんだけどね」と言いながら

見ると15年ぐらい前に売ってた小さなPHS
古くてボロボロ

てかやっぱり関わりたくない
いいって言ってるし
そもそもぶつかって壊れたって言いがかりだし

笑顔で会釈だけしてそろそろと車を進めてみたら
おじさん車のドアに手をかけ
修理代払ってくれないかな1万円ぐらい
なければ5千円でも3千円でもと

お金ないですと断ったら
そこにコンビニあるからおろせるよ
コンビニまで後ろに乗るねと
勝手に後部座席のドアを開け乗り込む姿勢

ひゃーーーー

私はもうびっくりして乗らないで下さいと
何でと聞かれ
知らない人だからと

なぜか納得したようで
おじさんは乗らずにドアを閉めた

これナニ?
てかこれ以上無理
関わりたくない
早く別れたい
多分お金渡したらすぐ解散できる
千円渡してさっさと行こう

バッグからお財布だしたら
お財布1万円札しか入ってなくて( ̄▽ ̄)

でもねもう
一刻も早く終わらせたかったから
渋々1万円を渡しました

そしたらおじさん
俺も友達待ってて急いでるんだよと
すぐに去っていかれました

母と旦那に顛末を話したら
それでいいそれでいい無事で良かった
お金なんていいよと

悔しいと思ってたけど
母と旦那がそう言うしまあいいか